多汗症の中でも日常生活に支障が出るほどの汗が手のひらに出ることを手掌(しゅしょう)多汗症と呼びます。
とにかく手汗がひどく、ボトックス注射やイオントフォレーシスでは対処しきれないという最終手段として、腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)という方法があります。
あくまでも最終手段であるとされるのは、その代償が大きいからとも言えます。
病院の先生も安易に手術を勧めてくることはまずありません。
どうにもこうにも・・・という場合だけであり、その場合でも副作用については重々理解しておく必要がありますので、ここで紹介しておきます。
手汗の腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)における注意点
原因が不明とされる手掌多汗症ですが、汗がでる仕組みは交感神経の過剰亢進だということは分かっています。
したがって、交感神経の伝達を遮断することができれば、汗が過剰に吹き出ることは確実に抑えられる。
そのためにする手術が腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)。
ETSでは発汗を促す交感神経そのものを焼いたり、切ったりして発汗の神経伝達を遮断してしまいます。
この手術を行うことで、手汗がびっしょりで悩んでいた事が嘘のように、ピタリと汗をかかなくなるほどの根本治療になります。
※まれに 1~5% 程度の方に再発することはあるようです。
手掌多汗症に対する手術の効果
手汗については、交感神経を遮断した直後から汗が驚くほどピタリと止まります。
交感神経は興奮状態や緊張状態の時に主に働く神経なので、遮断することで手汗だけでなく、いつもより緊張した時に起こる鼓動が速くならないし、顔が赤くなったりもしにくくなります。
こんなにすぐ効果が出るならもっと早くやっておけばよかった!
と手術した人は直後に思うでしょう。
手掌多汗症の手術は非常に効果が高いため、安易に希望される方も多いのが事実です。
しかし、手掌多汗症の手術については副作用についてもよく理解しておかなければならないことがあり、医師の説明をしっかりと聞いたうえで決めることが大切です。
特に、次に説明する副作用の問題は必ず起こり得るので確認しておきましょう。
手掌多汗症の手術における副作用の問題
ETSでは内視鏡を使った手術になります。
遮断する交感神経は背骨を中心に左右上下に走っており、大きく Th2、TH3、Th4 と3つのレベルの神経に分けられていて、Th4が最もレベルの低位の神経になります。
どれを遮断するかによって、副作用である代償性発汗の発現レベルが変わります。
この代償性発汗を少しでも抑えるためには「低位(Th4)交感神経遮断術」を切断することを選択するのが一番良いとされていますので、医師の説明をよく聞いておくことをおススメします。
手掌多汗症のETSによる治療では、「代償性発汗」というデメリットがほぼ100%あるとされるため、最初は代償性発汗の出現程度を観察するために片側のみの神経遮断を行います。
数カ月の術後の状態をみて代償性発汗に耐えうると判断された場合のみもう片側の手術を行います。
どうしても両側を一度の手術で処理して欲しい場合は医師と相談しましょう。
しかしながら、手術によって神経を遮断すると元には戻りません。
代償性発汗が出たからと後悔しても、手遅れということも少なくないのです。
もう1つ、これまで悩んでいた手汗が無くなる反面、手が逆に乾燥してしまいカサカサになるという新たな悩みが出ることもあります。
その場合、ハンドクリームを塗るなどして対処してください。
手術にかかる時間
手術で用いる内視鏡は通常は全身麻酔の後、脇の下を切開して挿入して目的の交感神経を電気メスで切断します。
概ね、手術時間は30分程度ですが、麻酔にかかる時間や覚醒するまでの時間が必要。
日帰りも可能ですが1泊2日が多く、術後は何回か通院して診てもらう必要があります。
特に女性が気になる傷跡(手術跡)に関しては、切開部を縫う糸が皮膚表面に出ないようにする埋没縫合という方法をとりますので、ほとんど目立たなく安心してよいでしょう。
手掌多汗症の手術の副作用のまとめ
交感神経を遮断することで手汗をほぼ確実に止めてくれるETSは、大量の手汗をかく人にとっては強く希望されることが多い。
一方で、手術における代償性発汗などの副作用も含めてよく理解しておくことが大切です。
安易に手術を勧めてくる医師はいませんが、強く希望し、手術を実行したところ副作用が出ても自己責任になってしまいます。
手術は最終手段。そう思って決断してください。