必要以上に大汗をかくことで、健常者では考えられないような障害が日常生活で発生してしまう多汗症。
日本全国で600万人もの人が悩んでいると言われる多汗症の原因は何か。
ここでは、多汗症の原因とされる事項を紹介します。
目次
2つの多汗症
多汗症の原因を知る前に、自分が本当に多汗症であるかどうかを知る必要性があります。
多汗症には以下の2つのタイプがある。
- 全身的に発生する全身性多汗症
- 特定の部位で発生する局所性多汗症
これらはさらに
- 原発性あるいは遺伝性と呼ばれる原因不明の多汗症
- ある特定の原因が隠れている多汗症
に分かれることをまずは知っておくとよいです。
原発性多汗症であるかどうかを判断する方法
願わくばそうであってほしくない原発性多汗症。
これを診断する基準というものがありますので、そちらについて該当するかどうかもチェックしておくとよいでしょう。
⇒原因不明の多汗症『原発性多汗症』かどうかをチェックする方法
原発性多汗症のおそれがある場合は、残念ながら原因を突き止めることは難しいとされるため、クリニックなどで根本治療を受ける以外に対処法がないとされます。
しかし、原発性多汗症ではなさそうだと判断できる場合は、大汗をかく理由・原因が何かきっとあるはずなんです。
ここからは、原発性多汗症を除く全身性・局所性多汗症の原因として考えられることを挙げていきます。
多汗症の原因として考えられる事例
原因不明の原発性多汗症ではない場合、どこかに汗が大量に出る原因があります。
その原因は様々ですが、共通しているのはほとんどが神経系の問題。
というのも、汗は自律神経によってコントロールされているため、なんらかの理由で自律神経が乱れている可能性が高いということです。
では主な理由を紹介していきます。
一時的な自律神経障害
よくある話ですが、生活習慣の乱れによる一時的な自律神経障害が多汗症の原因になることがあります。
夜遅くまで飲み会があったり、深夜に観たい番組があったり、ついついインターネットに集中していたら1時、2時になっていた!とか。
また、食生活でもカップラーメンやコンビニのから揚げとビールが晩御飯という日がよくあるなんてことないでしょうか?
あるいは、メニューを考えるのが面倒でいつも同じようなものばかりを食べてしまう。
そういうようなことで栄養の偏りができたり、あるいは不規則な食事時間が体の中にはストレスとして蓄積されていきます。
ストレスというのは、非常に曖昧な表現でなおかつよく聞く単語です。
何かあればストレスで片づけられてしまうことも多い。
では、ストレスとは何か?
多汗症を話のテーマにした場合では、自律神経(交感神経・副交感神経)の乱れが該当します。
自律神経というのは、私たちの体の体温調節や気持ちの上げ下げ、朝昼晩の体内時計など様々な日常生活における調子のコントロールをしている神経です。
もちろん、暑い寒いという環境への対応として汗の分泌も綿密に調節しているのが自律神経です。
この自律神経の一時的な乱れが多汗症に繋がるのですが、一時的な乱れも常習化してしまうとやがて”一時的”ではなく”慢性化”してしまいます。
そうすると、人間の体内時計やバイオリズムがおかしくなってしまうのです。
汗をかかなくてもいい場面で何故か勝手に汗が出る。
少し暑いだけで、大量に汗が出てしまう。
これらのようなことは、自律神経が上手くコントロールできていない証拠です。
そもそも、汗が出る仕組み(発汗要素)から分ければ
- 単純に暑さで汗がでる(温感性発汗)
- ストレスや緊張で汗がでる(精神性発汗)
がありますが、やはりいずれも自律神経が関与しています。
専門的なことを知らなくても、「あまり健康のためには良くないかな」と理解できそうなことは極力控えるようにするのも多汗症対策のためには大切なことです。
そして、実感できるような疲労を感じるときは、思い切って休むことも考えましょう。
決して直接的な解決法には思えないかもしれませんが、そういうところに原因があったりします。
過去の自分自身の生活習慣を振り返ってみてはいかがでしょうか。
睡眠の質の悪さによる多汗症
一時的な自律神経の乱れの原因になりやすいのが睡眠であり、実は多汗症の原因に多いのが睡眠の質の低下なんです。
私たちの体は活動している日中と休んでいる睡眠中では自律神経の働きが切り替えられていて、睡眠中は副交感神経が優位になっています。
ところが、夜遅くまで起きて、テレビやパソコン、スマホなどを見ていませんか?これらのモニターからは紫外線に似た青色光が発せられていて、その光が目に入ると交感神経が刺激されてしまいます。
すると、せっかく休息モードに入る体制になった体が十分に休めずに自律神経が乱れてしまうのです。
自分では眠れていると思っていても、実は体は十分に休息できていない可能性もある。
2、3日程度の夜更かしですと、たいして影響もないかもしれませんが数日間あるいは毎日夜更かしが習慣づいてしまうと危険です。
あるいは、夜中に何度か目が覚めてしまうという日が続いたり、私生活の悩みを抱えていて十分に眠れていなかったりしているのではないでしょうか。
もしかすると、うつ病などが原因となっていることもありますが、何故眠れないのか?ということを思い返してみてください。
人の体には体内リズムというものがあり、毎日が同じようなリズムで過ごせることがストレスを溜めないためにも理想なんです。
ところが、シフト制の勤務で夜勤と日勤が月ごとに何度か入れ替わる働き方をしている人や、特に意識していないけれど、早く寝る日もあれば夜中遅くまで起きている日もあるなんてことをしていると、体内リズムが狂ってくるのです。
不眠は万病の元。
もし、最近睡眠不足だなぁと感じることがあるようならば、まずは睡眠の改善から始めてみよう。そうすれば、多汗症が緩和されるかもしれません。
特に就寝前にカフェインもアルコールも摂取していないのに、眠れないという日々から解放されなということもありますよね。それはおそらく、就寝時に本来ならばリラックスすべき脳が活性したままになっているのかもしれないです。
しかし、脳の休息(リラックス)を助けてくれるハーブがいくつかあります。
それらを休息をサポートしてくれるサプリメントとして、筑波大学でも検証実験し効果を実証している「ネムリス」というものもおススメですので参考にしてください。
食事時間・食事内容が引き起こす多汗症
食べ過ぎ、飲みすぎ、間食、夜食・・・
食事時間がいつもバラバラ・・・
これらも多汗症に大きな影響を与えます。
生活習慣の乱れとおなじくくりに入れてもよかったのですが、あえて分別したのは食事がもたらす影響が大きいためです。
特に多汗症を悪化させるのは、カフェインやアルコール、そして強い香辛料が効いた料理。
いずれも、発汗を促してしまいます。
あるいは、夜の接待でお酒を飲んだ後に食べるラーメンは美味いですよね。
でも、それは塩分過多になったり、高コレステロールであったり、何より夜遅くに物を食べるという行為自体が胃腸によくありませんし、ひいては自律神経系の秩序を乱してしまいます。
汗をかくという生理現象は、基本的に自律神経によってコントロールされていると書きましたが、私たちが汗をかく理由についてはまだよくわかっていないこともあります。
ただ、確実なことは汗には体温調節機能があり、自律神経の乱れが大きくなれば多汗症のように汗が止まらなくなってしまうこともあるわけです。
食事中は特に副交感神経が優位に働いている時間であり、睡眠の時と同じ。
そんな食事の時間がいつも不規則であることが望ましくないことはわかると思いますう。
食事をすると当然、食べた物を消化するために胃腸は活発に運動しなければなりませんね?そのためには、脳から色々な消化酵素の分泌など胃腸の運動を促すためのホルモンが分泌されます。
半面、脳の血流は少し低下するので眠気が起こります。
浅い眠りの間は胃腸も働いてくれるのですが、だんだんと眠りが深くなると脳も胃腸も休息モードに入るため、食事と睡眠の間の時間が短いと消化不良が起きたり、その影響で睡眠の質が妨げられたりするのです。
ですから、食事の時間はできるだけ一般的な時間にそしていつもだいたい同じ時間にとることが大切です。
精神的・性格的な要素による多汗症
生活習慣の乱れに加えて、自律神経が多汗症に強く関与している限り忘れてはいけないのが性格です。
- 他人の目が気になりやすい。
- 人見知り。
- 恥ずかしがり屋
- 気が小さい。
- 引っ込み思案。
- ナイーブな性格。
というように、ちょっとマイナスなイメージがあるような性格の人は要注意です。
どんな人でもそういった性格の面は多少なりともありますが、少しばかり他の人よりも過剰かもと思えるようなら、生活習慣の乱れとは別にストレスが知らず知らずのうちに大きくなっている可能性はあります。
性格はガラリと変えることって難しいというか、正確は直そうと思っても直るものではありません。
「あの人はいつもポジティブでいいなぁ」
「あの人みたいに明るく社交的になれたら、自分も生活が楽しいだろうなぁ」
とうらやましさを持っていませんか?
それは見方を変えれば、自己否定をしているのと同じだと気づきましょう。
必ず全ての人には、足りないところがあるものなんです。
完全無欠のスーパーマンやスーパーウーマンはいません。
でも、彼らがスーパーマンでいられるのは、自己否定をしないからです。
ありのままの自分を受け入れることができているからです。
また、自分の良いところを見つけられているからです。
人はネガティブ思考に陥ると、すごく大きな精神的ストレスを抱え込みます。
それは時に多汗症だけでなく、もっと大きな病気さえ引き起こしてしまいます。
しかし、自分ってすごい!今日の自分は頑張った!エライ!と自分で自分を褒めることが出来れば随分と違ってくるはずです。
その方法としては、例えば自分だけが読むポジティブ日記みたいなものをつけてみたり、あるいはブログなんかで書いてみてもよいかもしれないです。
ブログの場合、あなたがポジティブな考えを綴れば、もしかすると他の誰かが影響を受けるかもしれません。
朗らかで前向きな人
後ろ向きで「自分なんて・・」と自己否定ばかりする人
あなたならどちらとお付き合いしていきたいと思いますか?
性格は治せませんが、性格は変わります。
マインドコントロールしていきましょう!
そうすれば、多汗症も吹っ飛びます!
日頃の運動不足
普段からあまり運動をするということを意識していない人は、その運動不足が多汗症の原因となっていることがあります。少し意外かもしれませんね。
というのも、もともと私たちの体には至る所に汗腺があり体温調節のために機能しています。
ところが、いつも空調が整った部屋にいたりして、普段から汗をかくという習慣が少ない人はやがて汗腺機能が衰えてしまい汗をかきにくくなり、特に心臓から遠いところの汗腺機能が衰えやすいのです。
結果的に少しの運動で頭や顔、首筋といった心臓に近いところの汗腺からの汗が集中してしまい、多汗症であるかのように感じることがあります。
解消法としては、体に負担が大きすぎない程度の運動で普段から汗をかくことで汗腺機能が衰えないようにすることしかありません。
健康ブームで実践者が増えているというウォーキング、あるいは趣味に登山、もちろんジムに通うというのもよいでしょう。
あなたに合った運動、考えてみませんか?
他の疾患の合併症などによるもの
多汗症は生活習慣の乱れが引き起こす自律神経の不調が原因となることも多いですが、それ以外にも隠れた病気が引き金となっていることもあります。
あなたが何かしらの持病があったり、特定の薬の服用を続けているというのであれば可能性はある。
特に多汗症を引き起こしやすいとされる病気について紹介します。
甲状腺機能亢進症
甲状腺は喉元にある蝶のような形をした器官。
ここからは甲状腺ホルモンが分泌されていて、体の代謝機能を促進する働きがあります。
この甲状腺の病気で最も多いのは バセドウ病 。
他にも、甲状腺炎がある。
これは、甲状腺の機能を亢進するホルモンの受容体に対する自己免疫疾患であり、簡単に言えば甲状腺ホルモンを分泌するためのスイッチを自分で常に押している状態です。
つまり、勝手に甲状腺ホルモンがどんどん分泌されてしまう状態です。
過剰な甲状腺ホルモンによって体の代謝が促進されると必要以上に体内エネルギーを消耗する状態になり、基礎代謝が異常に亢進されるので、大量に汗が出るわけです。
そのため、多くは体重減少がともないます。
他の症状としては、心臓の活動量が上がり頻脈、不整脈が起こったり、わけもなくイライラしたり嘔吐、下痢などの症状が出ることもあります。
思い当たる人は必ず病院を受診してください。
糖尿病
糖尿病の初期症状の1つに自律神経の乱調をきたす 糖尿病神経障害 があり、交感神経の過剰反応による発汗異常が出てきます。
ただ、大汗をかくというよりは暑くもないのに汗が出たり、逆に暑いのに汗が出ないなど汗のかきかたが異常であると表現する方が正しいかもしれません。
糖尿病は健康診断などを受けていないと自分ではまず気づくことはありません。
ですが、糖尿病の初期に起こりやすく自覚症状が出やすい合併症の糖尿病神経障害には要注意です。
体のどこかがピリピリと痛む、しびれるなど頻繁に感じるようであれば、検査をした方がよい。
とりわけ、女性の場合は更年期障害と間違えやすいので、食事中に首や背中、頭に汗をよくかく人は疑って損はありません。
ポイントは体臭や汗が甘いような匂いがすることです。
糖尿病の人の体内ではインスリンの分泌不良や機能不良によりブドウ糖を十分に活用できないため、代わりに脂肪酸を分解することでエネルギーを得ようとします。この時に副産物としてケトン体という物質ができます。
このケトン体が甘いような体臭の原因となる。
なお、糖尿病でなくても無理なダイエットをすることで、同様な体臭が出ることはあるようです。
これら以外にも多汗症を疑わせるような病気はいくつかある。
- 末端肥大症
- 急性リウマチ
- 心臓病
- がん
- 血圧の薬や抗うつ薬などの薬剤による二次的なもの
いずれにせよ、あなたに持病があったり、常用している薬があるのならば、その影響を医師に相談してみましょう。
もちろん、治療することが大切ですが、医師に相談することで治療方針を変えるなどの打開策が見つかるかもしれません。
脳下垂体のホルモン分泌異常
私たちの自律神経(交感神経、副交感神経)は脳の中にある大脳の視床下部というところで調整されているのですが、そのすぐそばには幅10mm ほどの小さな脳下垂体と呼ばれる器官があります。
この脳下垂体は全身のホルモン分泌を調整しているのです。
先ほどの甲状腺ホルモンの分泌もこの脳下垂体が調整しています。
脳下垂体からは様々なホルモン分泌を調整するホルモンが分泌されており、視床下部もホルモンによって影響を大きく受ける。
そのため、脳下垂体のホルモン分泌異常が交感神経を乱す原因になることはよくあるのです。
脳下垂体のホルモン分泌異常が起こる原因にはいくつかあり、血管障害、脳腫瘍、循環障害や炎症など。
血管系の障害によるものは、普段の食生活で水分不足、塩分過多、高コレステロール食、運動不足など原因はいくつか挙げられますが、脳下垂体のホルモン分泌に異常が起こるかどうかは予測できません。
ですから、体の異常を感じたら早めの診断を受けることが大切です。
多汗症に結び付くホルモン分泌異常で最も多いのが女性の月経による女性ホルモンの分泌低下です。
いわゆる更年期障害。
若年でも避妊薬の服用や食生活の偏りでも女性ホルモンの分泌異常が起こります。それが、多汗症を二次的に発症しているケースも見られます。
若い頃は特に何ともなかったのに、歳を取ってから急に汗をかくようになったという女性は、その多汗症が更年期障害によるものかもしれない。
これらの他、特に寝汗がひどいという人はまた別の病気が隠れている恐れがあります。
数日続く寝汗の場合、ほぼ何らかの原因がありますので要チェックです。
これらの他、高血圧が多汗症に影響しているのではないかという意見もあります。
ただ、高血圧だと診断される人の90%はその原因が不明であり、塩分の摂り過ぎ、不眠、ストレス、運動不足、喫煙など特定の何かが原因であると突き止めにくいのです。
つまり、高血圧も多汗症も特定の原因があるというのではなく、様々な要因が重なり合って起こっている可能性があるということです。
タバコが多汗症の原因じゃないか?というのも、同じことであり、タバコだけが原因で多汗症になるとは言えません。
遺伝的要因
ここまでは、特定の疾患が引き金となって引き起こされる二次的多汗症を紹介してきましたが、原因不明とされる原発性多汗症というものがあると最初に示しました。
原因不明とされていますが、おそらく遺伝的要因が強いのではないか?と考えられています。
というのも、原発性多汗症は家族内で遺伝するとも言われ、幼少期から10代の思春期に発症することが多い多汗症だからです。
現在、佐賀大学の研究チームが遺伝的要因を示唆する研究データを報告しているに限られています。
( Primary palmar hyperhidrosis locus maps to 14q11.2-q13. )
まとめ
いかがでしたでしょうか。
多汗症と一言にいってもその原因は様々です。
あなたが悩むその汗はどこからきているのか。
その原因をしっかりと調べることが、対策をするためにも重要です。